スペイン語での手紙の書き方。一般的な書式と便利な文例集をご紹介。

プライベートでもビジネスでも、近年では手紙よりEメールのほうがコミュニケーションツールとして主流であることは否定できない事実です。

とはいえ、手紙がまったく使われなくなったという訳でもありませんよね。

公的なものや重要な内容の通知、または特別な事情や思い入れのある内容を伝える際には、手紙を郵送するケースが多いでしょう。

ここではスペイン語での手紙の書式や特有の表現を、日本語のそれと比較しながら見ていきたいと思います。

手紙の書式・構成

私信(プライベートの手紙)であっても、ビジネスレターや公用文書であっても、手紙には一定の書式があります。

これはスペイン語でも日本語でも共通することですよね。

しかしその書式には若干の違いがみられることを知っておくべきでしょう。

発信地と日付―El lugar y la fecha(エル・ルガール・イ・ラ・フェチャ)

まずは手紙の右上に発信地と日付を記入します。

発信地とは「手紙が書かれた場所」、つまり差出人の居場所を指します。

通常はMadrid、Barcelona、Tokio、Osakaなど都市名ですが、県や地方などもっと大きい単位や、逆にもっと細かい(詳しい)地名を記すこともあります。

その都市名の後に日付を書くのですが、日本語とは全く逆で、スペイン語では「日・月・年」の順になるので気をつけてください。

日付と年はアラビア数字、月名は文字で書くのが一般的です。

<例> Madrid, 15 de enero de 2019

宛先・送り先―El destinatario (エル・デスティナタリオ)

送り先の氏名や会社名、住所はもちろん封筒にも記入しますが、家族やごく親しい友人あての場合を除いては、便箋にも書くことが多々あります。

位置としては、便箋の左上が一般的です。

最初に相手の氏名(会社名)を書きますが、個人名の場合は敬称Señor (Sr.) 、Señora (Sra.)、Don (D.)、Doña (Dña.) +氏名となります。

会社名の場合、正式名称を正しく書くのはもちろん、株式会社を示す“S.A.”なども省略せずに書くよう心がけてください。

住所の書き方も日本とは逆で、より細かい(詳しい)単位から大きい単位へと順に書いていきます:①通りの名前・番地・階数・ドア、②郵便番号、③市町村名、④県名、⑤国名。

また、郵便番号は最初や最後ではなく、市町村名の前に挿入します。

差出人―El remitente(エル・レミテンテ)

差出人名や住所もきちんと相手に伝えたい場合は、宛先と同じように氏名(敬称無し)・住所の順で右側に寄せて記入します。

履歴書を送付する時のカバーレターや公的機関への手紙など、数多くの手紙が届くであろう相手に送る場合や、封筒がすぐに捨てられてしまう可能性が高い場合には、このように差出人の住所を記入しておくほうが無難でしょう。

ビジネスレターで差出人(会社)のレターヘッドに住所等の情報も含まれている場合は、別途記入する必要はありません。

なお、宛先・日付・差出人情報を記入する順序や位置は、同じスペイン語圏でも国や地方、手紙の種類などによって若干変わってきます。

ただ、宛先は左寄り、日付と差出人は右寄りというのがごく一般的です。

件名・担当者―El asunto・La atención(エル・アスント、ラ・アテンシオン)

ビジネスレターなどの場合、宛先や日付の後に“Asunto”(アスント、「件名」)や“Atención/Attn.”(アテンシオン、「ご担当○○様」)が入る場合もあります。

<例>

  • Asunto:Solicitud de presupuesto=件名:見積もりご依頼
  • Asunto : Información sobre el nuevo proyecto=件名 : 新プロジェクト情報
  • A la atención del Jefe de Departamento Comercial=ご担当、営業部長様
  • A la atención de Sr.Sanchez, director de Marketing=ご担当、マーケティング部長サンチェス様

冒頭の呼びかけ・挨拶ーEl saludo(エル・サルード)

日本語でいうと「拝啓/親愛なる、○○様」に当たる部分です。

プライベートの手紙であれば以下の例がよく使われます。

特定の個人宛の手紙であれば相手の名前や役職を入れることもできますし、不特定の相手あるいは複数人宛の手紙であれば、最後の“Estimados señores”が便利でしょう。

  • Mi querido amigo:(ミ・ケリード・アミーゴ)=私の親愛なる友人へ
  • Querido Carlos: (ケリード・カルロス)=親愛なるカルロス(君)へ
  • Estimado cliente:(エスティマード・クリエンテ)=拝啓、お客様
  • Estimada Profesora Moreno:(エスティマーダ・プロフェソーラ・モレノ)=拝啓、モレノ先生
  • Estimados señores:(エスティマードス・セニョーレス)=拝啓、皆様

本文―El cuerpo(エル・クエルポ)

日本語の手紙と大きく違うのは、本文の書き出しに時候の挨拶などが必要ないことでしょう。

「お元気ですか」「いかがお過ごしですか」などといった挨拶文はあったとしても、季語を含むかしこまった文章などは使われないので、日本語の手紙をそのまま訳そうとすると躓いてしまいます。

ビジネスレターや公的文書でも、前置き無く比較的すぐ本題に入るケースがみられます。

どんな言語の手紙でも基本的には起承転結の構成になっていると思いますが、スペイン語の場合は特に最初に重要な用件を伝える形式が多いようです。

本文で使われる一般的で便利な表現は後で詳しく見ていきましょう。

別れの言葉・結びの句・結辞―La despedida(ラ・デスペディーダ)

手紙の最後の部分ですが、これに関してはスペイン語のほうが長いものが多く、また種類も豊富です。

主なものには以下が挙げられ、いずれも意味的には日本語の「敬具」に当たるものと考えていいでしょう。

<フォーマルな手紙の場合>

  • Atentamente/Sinceramente/Respectuosamente/Afectuosamente/Cordialmente,

直訳はそれぞれ「丁寧に」「真摯に」「尊敬の念で」「愛情を込めて」「心から」となります。

  • Un cordial saludo/Saludos cordiales,

直訳はいずれも「心を込めて/心からのご挨拶」となります。

  • Le ruego que reciba mis más cordiales saludos,

直訳=どうか私の心からのご挨拶をお受け取りください。

  • Con este motivo, le envía un cordial saludo,

直訳= これを機に、心からご挨拶申し上げます。

  • Sin otro particular, les saluda atentamente,

直訳=以上です。

ご挨拶申し上げます。

  • Aprovechamos esta oportunidad para saludarles atentamente,

直訳=この機会に丁重なご挨拶をさせていただきます。

<親しい友人・家族などへの手紙の場合>

  • Un abrazo/Un beso/Abrazos/Besos (de tu amigo/de tu hijo)

“beso”(ベソ、「キス」)や“abrazo”(アブラソ、「抱擁・ハグ」)を友達や家族に使うのは、慣れていない日本人には少し照れ臭いかもしれませんが、決まり文句として考えて問題ないので、ぜひ使ってみましょう。

単数の“Un beso”でも複数の“Besos”でもあまり意味は変わらず、複数の方が愛情がより感じられるというようなことはありません。

署名―La firma

署名“Firma”(フィルマ)は正式な文書の終わりには必須です。

親しい間柄の人宛の手紙でも署名をすることが多いです。

ビジネスレターなどの場合は、誰が署名したのかはっきりさせるために、下に楷書で(通常はタイプして)氏名や役職を記入するのが慣わしとなっています。

追伸―P.D.

日本語の「追伸」に当たる言葉はスペイン語では“P.D.=Postdata”(ポストダタ)です。

何か書き忘れたことがある場合に、P.D.と記した後で追加の文章を書きます。

手紙本文中の一般的・便利な表現

(※読み方のカタカナ表記は省略し、意味のみ記します)

挨拶・ご機嫌伺い

  • ¿Cómo estás? ¿Qué tal todo por tu ciudad?

=ご機嫌いかがですか?そちら(あなたの街)はどんな様子ですか?

目上の人や距離を感じる相手に対しては“¿Cómo está?”、 “por su ciudad”となります。

  • Espero que te esté yendo bien el trabajo.

=仕事が上手くいっていることを願っています。

“el trabajo”(エル・トラバホ、「仕事」)の部分を“el estudio”(エル・エストゥディオ、「勉強」)や“el nuevo proyecto”(エル・ヌエボ・プロジェクト、「新しいプロジェクト」)とすることもできます。

  • Aquí, estamos todos bien.

=こちらはみんな元気です。

受け取った手紙へのお礼

  • Muchas gracias por tu/su carta.

=お手紙ありがとう(ございました)。

  • Hace unos días, recibí tus/sus noticias, que me dieron mucha alegría.

=数日前に君の/あなたのお知らせを受け取り、大変嬉しかったです。

  • Disfruté mucho leyendo tu/su carta.

=君の/あなたのお手紙を楽しく拝見しました。

用件を示す(特にビジネスレターの書き出しとして)

  • Me dirijo a usted en referencia a ・・・

=・・・に関してお便り差し上げます。

  • Le escribo para informarle de ・・・

=・・・についてお知らせいたします。

  • En respuesta a su consulta del pasado día○○、le escribo.

去る○○日のお問い合わせに対し、ご回答差し上げます。

終わりの表現

  • Cuídate mucho./Que se cuide mucho.

=体に気を付けて。

/ご自愛ください。

  • Espero volver a verte pronto.

=またすぐに会えることを期待(楽しみに)しています。

  • Saluda/Recuerdos a tu familia de mi parte.

=ご家族によろしく。

  • Esperamos tu pronta respuesta.

=早いお返事待ってます。

  • Quedo a la espera de sus noticias.

=お返事をお待ち申し上げております。

相手の返事が必要な内容の手紙の最後につける文章です。

  • De antemano, le doy las gracias por la atención prestada a mi solicitud.

=私のお願いをご考慮いただけますことに前もってお礼申し上げます。

ビジネスレターや公的機関への手紙の終わりによく使われる文章です。

  • Quedo a su disposición para posible entrevista personal con ustedes.

=面接をしていただけるのであれば喜んで伺います。

履歴書を送る際のカバーレターなどに入れる文章です。

季節の挨拶・お祝い、等

  • ¡Feliz cumpleaños! ¡Que cumplas muchos más!

=お誕生日おめでとう!これからもお元気で(長生きしてください)。

  • ¡Feliz Navidad! /¡Felices Fiestas!

=メリークリスマス!よい年末年始を!

スペイン語圏の国々では12月24日のクリスマスイヴから年明け1月6日の公現祭までの期間中に複数の祭日(Fiestas)があるので、後者の挨拶が使われることがあります。

  • ¡Feliz Año Nuevo! / ¡Próspero Año Nuevo!

=新年おめでとう!

  • Espero que este año 2019 sea muy bueno para usted y para sus familiares.

=2019年があなたとご家族にとって良い年でありますように。

封筒の書き方

ここでは定型横長の封筒を想定して、宛先と差出人の書き方を説明します。

宛先は、封筒表面の真ん中(あるいは少し右寄り)に受取人の氏名・住所を書きます。

氏名を一行目に、住所を2行目以降に書きますが、前述の通り、住所の書き方が日本とは異なりますので注意が必要です。

一般的には以下のように改行して書きます。

受取人氏名

通りの名前・番地・階数・ドアの文字(A、B、C、等)

郵便番号・市町村名・県名

国名

エアメールの場合は国名が必須です。

途中どこの国を経由するか分からないので、スペイン語名と英語名を両方書いておいたほうがいいかもしれません(España/Spain、Japón/Japanなど)。

また、最近では船便が使われることはほとんどありませんが、“Por Avión” や“Via Air Mail”と目立つように大きく、違う色で書いておけば間違いなく航空便で送られるので安心です。

差出人の氏名と住所は封筒表面の左上に書くことが多いですが、スペースが少ない場合などは裏面の上部に記入しても大丈夫です。

氏名の前に“Rte./Remitente”(レミテンテ、「差出人」)と書いておけば、宛先と間違われる可能性もないでしょう。

まとめ

家族や友達との連絡からビジネス文書まで、日常のやり取りはほとんどがSNSやEメールで行われる今日ですが、手紙の書き方を知らなくてもいいというわけではありません。

特に外国語の手紙の場合は、日本語とは異なる形式や表現を覚えておくことが大切です。

そして、これはEメールにも共通して言えることですが、書き言葉特有の言い回しをたくさん覚えておくことで、より自然で表現豊かな文面で相手に内容を伝えることができるでしょう。

また、手紙を出す場合だけではなく、受け取った時にもこうした知識は重要です。

特に、公的機関からの堅苦しい文書に関しては、特有の決まり文句を知っておかなければ解読するのも困難です。

ある程度の知識を身につけたら、後は実践あるのみですね。

普段はSNSやチャットでやりとりしているような相手にも、たまには手紙を郵送してみてはいかがでしょうか。

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