スペイン語を勉強したい、けれど学校へ通う時間やお金が無いという人は結構いると思います。
あるいは、気が向いたときに自分のペースで勉強したい、という人も多いのではないでしょうか。
今回はスペイン語の学習をこれから始める入門者、あるいはまだ始めたばかりという初級学習者を対象に、独学でスペイン語を学ぶという選択肢について考えていきましょう。
目次
独学することのメリット・デメリット
独学=学校に通ったり先生に付いたりせずに一人で(自己流で)学ぶこと、と定義した場合、以下のようなメリット・デメリットが考えられます。
メリット
- 授業料がかからない分、費用が安くすむ。
- 好きな時に始め、好きな方法で、あるいは自分のペースで学習を進められる。
- 自分の興味のある分野やテーマに集中して勉強することができる。
デメリット
- スペイン語で会話をする機会が、学校へ通う場合に比べて少ない。
- 疑問・質問が出てきたときに、先生やクラスメートに相談することができない。
- 続ける意志が強くなければ、途中で挫折する可能性が高い。
実際に独学でスペイン語の勉強をすると決めた人は、そのメリットをどれだけ活用できるか、そしてデメリットをどのようにカバーするかを常に考えながら、学習を進める必要があるでしょう。
独学のための参考書・教材
スペイン語に限らず、語学を学ぶ際には参考書や教材の選び方が大切になってきます。
どんな参考書・教材を使うか、またどのように使うかが上達のスピードに少なからず影響してくるからです。
スペイン語を扱った本は、英語のそれと比べると選択肢は少ないですが、それでも近年かなりの種類が出回っています。
学校に通っていれば指定のものがあったり、先生が薦めてくれることもありますが、すべて自分で選ぶとなると迷ってしまいますよね。
そこで、ここでは特に入門・初級者の独学用におすすめの参考書や教材を、具体的な例も挙げながら見ていきたいと思います。
辞書
まずは語学学習の基本中の基本、辞書を選びましょう。
見出し(単語)の数も大事ですが、入門・初級者レベルの場合、各単語の定義がわかりやすい、あるいは用例が多いなどの点に着目することをおすすめします。
特に独学の場合ですと、その場で先生に質問するわけにもいかないので、できるだけ丁寧に説明されているものを選ぶほうが賢明です。
- プログレッシブスペイン語辞典(小学館):
西和辞典に加えて、ミニ和西辞典や旅行会話も付いているので便利です。
文字が比較的大きく二色刷りで、イラストもついていたりするので、親しみやすい印象を受けます。
見出し数は多いほうではありませんが、入門者には使いやすいと評判です。
- 現代スペイン語辞典(白水社):
見出し語の数が多いわりにはコンパクトで持ち運びに便利な辞書です。
ひとつの単語に関する情報量が充実しています。
特に用例の数が豊富なので、作文をする時に役に立ちます。
電子辞書バージョンもあるので、さらに軽いものを求める人には最適です。
ややフォントが小さいため、難しい印象を与えるかもしれませんが、初心者から上級者まで幅広い学習者の需要を満たしてくれるので、長年の愛用者が多いと言われます。
文法書
辞書と同じく、本の厚さ(取り扱い項目の数)よりも解説のわかりやすさに重点をおきましょう。
学習を始めたばかりの頃は情報量があり過ぎても混乱しますし、難しい文法書を目の当たりにすると、それだけでやる気が失せてしまう可能性だってあるからです。
レベルや項目別にうまく整理された薄めの本を選んで、それを順に、そして完璧にマスターしたほうが実は効率がいいですし、達成感も得られると思います。
- 文法から学べるスペイン語(ナツメ社):
見た目は難しそうではないのですが、実用上必要な文法事項が網羅された密度の濃い本です。
文法の説明が入門・初級者レベルの学習者にもわかりやすく、さらに動詞の活用形の練習問題が充実しています。
- やさしいスペイン語文法 CD付き(三修社):
入門者・初級者にもわかりやすいように丁寧に解説されています。
カタカナ表記がされていて、2色刷りで文字も大きいため、読みやすい教材として知られています。
単語集
- これなら覚えられる!スペイン語単語帳(NHK出版):
主に超基礎から基礎レベルの語彙が1500くらい載っています。
この単語帳をしっかりマスターすれば、日常会話では問題が無いくらいの語彙力が身につくはずです。
- キクタン スペイン語【入門編】(アルク):
付録のCDコンテンツを使って楽しく学習できると評判です。
スペイン語入門者が初めて学ぶ基本約500語が収録されているので、丸暗記するような気持ちで使うことをおすすめします。
1000語が収録された【初級編】、2000語が収録された【初中級編】も発行されているので、語学力がレベルアップしても、同じシリーズで勉強し続けることができます。
その他:スペイン語の本・映画
自分の興味のある分野の本や映画も恰好の教材となります。
「この本をスペイン語で読みたい」と「このスペイン語の映画を字幕無しで観たい」という目標があれば、学習のモチベーションもあがるでしょう。
いきなり難しいものに挑戦するとハードルが高すぎて途中で挫折しかねないので、入門・初級学習者は子供用の本や映画、あるいは日本語で読んだ(観た)ことのあるものから始めるのもいいかもしれません。
テレビ・ラジオ・インターネット
NHKのスペイン語テレビ・ラジオ番組は、基本的なフレーズを中心に構成されているので、入門者や初級者には特におすすめです。
1回の番組はそれぞれ25分と15分ですから、忙しい人でも見る(聞く)ことができますし、集中力が途切れる心配もなさそうですね。
その他にも、インターネット上にはスペイン語の文法や語彙、発音を解説するWebがたくさんありますし、Podcast、Youtubeにも無料のスペイン語番組が複数存在します。
英語で説明されるものはもっと多いので、英語がある程度できる人はさらに選択肢が増えますね。
また、スマホ用に楽しみながら学べるアプリも色々と出てきていて、その多くは無料です。
実際に試してみて、自分にあったものを見つけてください。
独学の方法(文法・発音)
文法の習得
スペイン語がとりあえず話せればいいから、面倒な文法の勉強は最低限にして、とにかく会話で便利なフレーズを丸暗記しよう、という人もいるでしょう。
確かに一度きりの旅行に行くだけのためであれば、それでもいいかもしれません。
でも、長い目で見ればやはり文法の知識は不可欠ですし、何より応用が効くというメリットがあります。
文法の中でもスペイン語の学習者が一番悩まされるのは、動詞の活用形の多さでしょう。
時制だけでなく、主語によっても活用形が変わり、さらに直接法・接続法という二つの体系があるので、ひとつの動詞について何十もの活用形があるのです。
その膨大な数の活用形を覚えるコツは・・・・とにかく繰り返し唱えることでしょう。
何度も何度も反芻することで、頭に叩き込むのが一番の方法です。
日本人が日本語の間違った活用に触れた場合に「何か変」と思えるのは、生まれてからずっと繰り返し見聞きしてきたからなのです。
暗記という作業は学校に通っていてもいなくても、一人一人が自分で努力する以外に手はありません。
そう考えると、独学者が通学者に比べて不利ということはないですよね。
発音の習得
日本語の話者にとって、同じく5つの母音からなるスペイン語の発音は決して難しいものではありません。
スペイン語で書かれているものをそのままローマ字読みしても、大部分の発音は間違っていません。
ただ、子音の中には日本語に無いもの、英語のアルファベットとは発音の仕方が違うものがいくつかあるので注意が必要です。
まずは各アルファベットの発音を確認し、しっかり身につけることです。
独学の場合、間違って発音しても直してくれる人がいませんから、初めに正しい発音を確認したほうがいいでしょう。
また、各語のアクセントについては法則をしっかり覚えることが大切です。
文節の区切り方やアクセント記号の付け方の決まりを覚えてしまえば、知らない単語に出会った時にも応用が効くからです。
スキル別の上達方法・コツ
読む(読解)・書く(作文)・聞く(聴解)・話す(会話)という4つのスキルに関して、それぞれを独学で向上させるにはどんな方法が良いのか考えてみましょう。
読む
発音のところでも触れましたが、スペイン語を読む(発音する)こと自体はそれほど難しいことではありません。
が、読んだ文章を理解する、となると話は別です。
英文読解と同じように、ひとつひとつの単語の意味を知っているだけでは文章は理解できません。
特に長文では文の構造がわかっていないと意味が通じないので、文法力が問われます。
単語カードなどを使ってやみくもに単語の定義だけを暗記しようとしても、なかなか覚えられませんよね。
文章の中で使われている単語であれば、その意味と同時に、どのような使われ方をするのかも知ることができます。
辞書や単語集でも用例の多いものをお勧めする理由はそこにあります。
入門・初級者の場合は、子供用の絵本や、新聞のタイトルなど短い文章から読むクセをつけるといいでしょう。
自分のレベルに合った、そして関心のあるテーマを扱った教材を見つけることをおすすめします。
書く
頭で覚えた単語や文章を書いてみることで、綴りを確認できますし、より記憶にも残りやすくなります。
ただ、単語や慣用句を、間違ったまま繰り返し書いていては元も子もありません。
発音の習得と同様、独学の場合ははじめに正しい綴りをしっかり身につけることが大切でしょう。
入門・初級レベルでは、長い文章を書くのに時間がかかり、億劫になりがちです。
毎日スペイン語で短い日記を書いたり、スケジュール帳やカレンダーにスペイン語で書き込んだり、と日常生活のちょっとしたところでスペイン語を取り入れてみてはいかがでしょうか。
聞く
CDのついたリスニング用テキストなども販売されていますが、おすすめは教材についての項目で述べたように、テレビやラジオのスペイン語学習番組を利用することです。
とくに長年続くNHKの番組はよく練られた構成と、わかりやすい説明に定評があります。
少し耳が慣れてきたな、と思ったら、ネイティブが話す普通のスペイン語のテレビ番組や映画に挑戦してみてもよいでしょう。
最近はインターネットでスペインや中南米のニュース、ドラマ、バラエティなどあらゆる番組を視聴することができますね。
ただ、ニュース番組をのぞいては、ネイティブスピーカーのスペイン語は早すぎたり、特有のアクセントやイントネーションがあって、入門・初級者にはかなりハードルが高いと思います。
耳だけで理解するのは難しいという場合は、画面に歌詞が流れるミュージックビデオや(スペイン語)の字幕が付いているスペイン語映画を教材として、目と耳の両方で追いながら訓練してみましょう。
話す
これまでスペイン語の独学者が最も苦労していたのが、会話の機会を見つけることだったのではないでしょうか。
スペイン語圏の国に住んでいるのならまだしも、身近にスペイン語で会話できる相手がいる人はそう多くないと思います。
が、今の時代、インターネットさえあれば可能性はいくらでも広がるのです。
スカイプを使ったオンラインレッスンならば、家にいながら語学学校に通うよりずっと安い価格で会話形式の授業を受けることが可能です。
また、Facebookなどを通じて言語交換(※)のパートナーやグループを見つけることもできます。
自宅を出ずにネイティブスピーカーと会話をするなんて、ひと昔前には考えられなかったことですよね。
※言語交換=ランゲージエクスチェンジ:学びたい言語を、その言語のネイティブスピーカーと一緒にお互い教えあいながら学ぶシステム。
まとめ
インターネットのおかげで、語学の独学者を取り巻く環境は劇的に向上しました。
無料あるいは安価で多種多様な教材が手に入りますし、学校に行かなくても留学しなくてもネイティブスピーカーと会話をする機会を得られます。
学校に通ったり留学したりすることと比較しても、独学のデメリットが減り、むしろメリットのほうが目につくくらいです。
これまでスケジュールが合わないから、お金がかかるから、といってスペイン語の勉強を先延ばしにしてきた人も、まずは独学で始めてみてはどうでしょうか。