英語は欠陥言語?英語の綴りと発音のズレに関する原因を解説。

英語を勉強しているとまず気付くのが、「発音と綴りのズレ」ではないでしょうか。

文字では「Knit」、「Knife」と書くのに、読むときには最初の「K」を発音しなかったり、「buiness」、「bus」と表記するのに「u」をウと読まなかったり。

「through」「night」「sigh」などの「gh」も同様で、口に出す時には発音されません。

この段階で頭を痛めた人も多いと思います。

例えば日本語のように、書いた通りの音で発音するのなら簡単なのですが、一体英語はどうして綴り通りに発音しないのでしょうか。

今回はそんな英語にまつわる発音と綴りのズレについて、言語の歴史から紐解いていきたいと思います。

ローマ字と英語

英語学習に挫折する人の特徴として、英単語の読みと綴りのズレが原因であることがよくあります。

英語を習い始めたころに、「February」や「Libruary」などの単語を始めて見た時はどうでしたか?

書いた通りに読んでも正しい発音にはならず、読みにくいと感じた経験があるにではないでしょうか。

それもそのはず。

小学校では先にローマ字の読み方を覚えていますから、なかなか英単語が覚えられないのです。

この綴りと発音が異なる現象は英語特有の現象です。

日本語を始め他のヨーロッパ言語では、ある一定のルールさえ覚えてしまえば比較的綴り通りに発音することができます。

ではなぜ、英語だけこんなにややこしいことになっているのでしょうか。

そのヒントは言語の歴史に隠されていました。

綴りと発音のズレは英語の歴史にあった!

英単語の綴りと発音のズレが生じている理由は、言語の歴史が大きく影響しています。

その歴史を少し掘り下げて見ていきましょう。

現在イギリスがあるブリテン島には、かつて古くからケルト人と呼ばれる人々が住んでいました。

そこへ後にアングロ・サクソン系の人々が移り住んでいきます。

「England」とはアングロ人のAngleが由来になっています。

つまり「アングロ人の国」という意味であったAngleという単語が変化して、後にEnglandになったと言われています。

またそのアングロの人たちが話す言語と言う意味で、その言語を「English」と呼ぶようになりました。

当時はまだ綴りと発音に差異がなかったのですが、その後ノルマン・コンケストと呼ばれるフランスが王国を統治する時代に突入すると、英語に大量のフランス語が流入していきます。

この時代には読み書きを習得できる環境にいたのは貴族階級のみで、扱われていた分野も宗教、財産、政治、法律、文学といった学術的なものが大半でした。

そのためこの時期に流入したと言われるフランス語は、これらの分野の言葉が多くなっています。

例えばフランスから入ってきた言葉に、moneyや tax、court、gentleなどがあります。

どれも今では英語として当たり前に使われている単語なので、元は外来語だと知ると驚くでしょう。

これらのフランス語は、イギリスで使われる時に音だけが英語の音のように訛っていったため、結果的にスペルとの違いが生まれてしまいました。

その後ルネサンス期に入ると、ローマ時代に発展した文学や芸術が再度人々の間で流行し始めます。

そしてその頃使われていたローマ字、つまりラテン語が次に影響を与え始めていきます。

Explain、communicateなどはその例で、これらは全てラテン語が起源の単語です。

また現在では英語として認識しされている単語である「people」も、元はフランス語が語源の単語だということをご存知でしたでしょうか。

これは古英語で「folk」、ラテン語では「population」になります。

全て「人々、大衆」を表す言葉ですね。

また出発を表す「depart」もフランス語由来の単語で、英語では「go」、ラテン語では「exit」になります。

上記以外にも多くのフランス語やラテン語が英語に影響を与えているので確認してみましょう。

古英語help 仏aid ラテン assistance
古英語 time 仏 age ラテン epoch
古英語 fair 仏 beautiful ラテン attractive

もちろん各単語はその国や地域においては独自の発音で読まれています。

しかしそれが英国に入ってきた時に、それぞれ「英語」で発音がしやすいように音が変わっていったのです。

そのため、英語は綴りと発音が一致しないまま定着していきました。

その後あらゆる時代を経て、英語が正式に公用語となった後でも、この綴りと発音のズレは訂正されることなく現在に至っています。

この歴史的言語背景を知らずに、いきなり英語を学習し始めた我々にとっては、このズレがなんともややこしく感じてしまうのですね。

ある時期にこの差異に関して修正を行えば良かったのですが、その時期には変える必要のないほど現在の音とスペルで浸透してしまっていたのでしょうか。

その理由は明確ではありませんが、したがって現在もこのややこしい発音とスペルのまま覚えるしか方法はないようです。

第二言語として英語を学ぶ我々にとっては、慣れるまでの間、何とも歯がゆい思いをしなくてはなりません。

三単現のsや二人称のyou

三単現の「s」や二人称の「you」に関しても曖昧な部分が存在します。

もっとも英語文法の中で覚えるのに苦労するのが三単現の「s」です。

日本語に馴染みがないのはもちろん、三人称が主語になった時に現れるこの「s」は一体何者なんだろうと感じたことがあるのではないでしょうか。

せっかく覚えた三単現の「s」ですが、実は地域によってこの「s」を付ける地域と付けない地域があるのです。

また古い英語の書物でもこの使い分けは曖昧です。

上記で述べた通り、現在のイギリスがある地域ではフランスの支配下にあった時代も長く、一つの国でありながら階級によって英語もフランス語も話されていました。

またラテン語やギリシャ語の影響も受けるなどする中で発展してきた言語なので、一つの公用語として正式にまとまるまでにかなりの時間を要しています。

さらに地方と都市では言語が受ける影響や変化が異なるため、これも文法が統一されていない理由に一つでした。

また「you」に関しても曖昧な点があります。

日本の学校では、二人称単数と複数に関してどちらも「you」で表すと教わってきたと思います。

ところが現在では単数を「you」、複数形に関しては「you all」や「you guys」、また二人の場合に「you two」などと表現することが増えています。

もちろん複数に従来の「you」を使用しても間違いではありませんが、区別をする傾向が強くなってきているようです。

実は古英語の時代には二人称の単数と複数を明確に区別する単語が存在していました。

古英語では「you」の他に、よりカジュアルな単数形に「thou」を、その複数形には「ye」を用いていました。

日本語でいう「あなた」がyouなのに対し、「きみ」に当たる言葉になるのでしょうか。

アイルランドの一部地域では現在も口語体として残っていますが、ほとんどは文学作品の中でしか目にすることはなくなりました。

この区別がされなくなった背景としては、階級社会の流れから相手への侮辱や差別的な用語として用いられることを無くすためだったとされています。

時代と共に、そのような上下間を思わせる言葉は人々の間で使われなくなっていったのでしょう。

このことを考えると、現在の「you」と「you all」の使い分けは、以前の古い英語の形態に再び戻りつつあるとも考察できます。

1000年以上もの長い歴史を持つ英語ですが、時代や流行と共に今でも日々変化し続けています。

「TSUNAMI」や「ANIME」は日本語がそのまま使われていますし、フランス語ほど大量流入しているわけではありませんが、少しずつ各国の言葉が取り入れられています。

イタリア語やトルコ語、中国語や韓国後、インドやアジア地域の言葉まで、文化と共に輸入されています。

興味がある言葉だけでも調べてみると、今まで知らなかった意外な発見があるかもしれませんね。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

今回は「欠陥英語」という題目で、英語の綴りと発音のズレに関する原因や、英語の歴史についてまとめてみました。

私たちは学校でいきなり「英語」として勉強をはじめるため、その発音がどうして書くときに違うのか、なぜyouの複数形はyouなのかという理由まで知らずに学習してきました。

ややこしく感じる英語のスペルも、その理由や背景が分かればずっと理解しやすくなります。

また言語は時代や流行によっても大きく変化していく分野です。

グローバルに発展する現代ではそのスピードも以前に増して一層早くなることが予想されます。

日本語に横文字が増えているように、英語にも外国からの影響を受けた多くの単語が混ざり合っているのです。

ぜひ単語の由来に関心を寄せながら、楽しく英語を学んでいければいいですね。

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