目次
「おいしい」を表す形容詞
まずは「おいしい」を意味する形容詞をいくつかご紹介しましょう。
これらの形容詞について気をつけなければならないのは、動詞“estar”と一緒に使われる時と動詞“ser”と使われる時では異なる意味をもつ場合が多いことです。
スペイン語の動詞“ser”と“estar”はどちらも英語のbe動詞に相当するものですが、後に形容詞が続く場合、以下の違いがあります。
ser:もともと(生まれながらに)持つ性質やあまり変化のない性質などを表します。
estar:人や物の一時的な状態を表します。
つまり、素材そのものの質について述べる時などは“ser”、その時食べている(あるいは過去に食べた)料理の味に関するコメントを述べる時には“estar”が使われることになります。
- bueno / buena(ブエノ/ブエナ)
「良い」、「適切な」、「上等な」、「美味な」、「愉快な」など様々な意味を持つ形容詞です。
名詞の前にも後ろにも置かれることがあり、それによっても意味が変わってきます。
男性名詞の前に置かれる場合、“bueno”は“buen”となるので注意してください。
- rico / rica(リコ/リカ)
「おいしい」の他にも「金持ちの」、「豊かな」、「見事な」などと訳されることがあります。
- delicioso / deliciosa(デリシオソ/デリシオサ)
「美味な」、「おいしい」の他、「心地よい」、「魅力的な」という意味でも使われます
- exquisito / exquisite(エスキシト/エスキシタ)
「上品な」、「洗練された」、「心地よい」という意味から転じて「美味な」という意味で使われます。
- sabroso / sabrosa(サブロソ/サブロサ)
「味・風味」を意味する‟sabor”から来る形容詞で「風味のある」、「味のよい」を意味します。
ただ、「皮肉を込めた」、「機知に富んだ」など、全くことなる意味で使われることもあるので注意が必要です。
「まずい」を表す形容
- malo / mala(マロ/マラ)
‟bueno / buena“の対義語にあたる単語です。
Serと一緒に使われると「悪い」、「不適切な」、「不道徳な」の意味となることが多く、Estarに続く時は「病気の」、「(物が)痛んだ」、「まずい」と訳されます。
- desagradable(デスアグラダブレ)
「不愉快な」、「嫌な」を意味する形容詞ですが、味について言及するときは「まずい」と訳すこともあります。
- soso / sosa (ソソ/ソサ)
食べ物の「味が薄い」、「風味の無い」という意味ですが、人間についても「面白味の無い」、「愛想の無い」という意味で使われます。
- insípido / insípida(インシピド/インシピダ)
上述の“soso”の類義語で、「無味の」、「まずい」、「面白味の無い」、「無味乾燥の」などを意味します。
- asqueroso / asquerosa (アスケロソ/アスケロサ)
「ひどく汚い」、「吐き気がする(ほど不味い・いやな)」、「卑劣な」などを意味する形容詞。
かなり強い印象を与える言葉なので、時と場所を考えて使いましょう。
特に、人が作った料理の感想としては使わないほうがいいかもしれませんね。
他に、「おいしい」を意味する形容詞の文を否定形「おいしくない(=まずい)」にして使う方法もあります。
- Este plato quemado NO está bueno.=この焦げた料理はおいしくありません(まずいです)。
具体的な味を表す形容詞
- ácido(アシド)またはagrio(アグリオ)
どちらも「味が酸っぱい」の他に「不機嫌な」、「辛辣な」という意味でも使われます。
- picante(ピカンテ)
「刺す」、「刺激する」を意味する動詞“Picar”(ピカール)の関連語で、「辛い」の他に「辛辣な」という意味を持ちます。
- dulce(ドゥルセ)
「甘い」の他にも「温和な」、「穏やかな」などを意味する語です。
- amargo(アマルゴ)
「苦い」、「つらい」、「不快な」などを意味します。
- salado(サラード)
味に関しては「塩気のある」、「しょっぱい」、「塩辛い」の意味ですが、人について言及する場合、「気の利いた」、「機知に富んだ」と訳されることもあります。
日本語と同じで、これらの味を表すための形容詞の多くは、心情や人の性格、物の性質などを表すのにも使えることを覚えておくとよいでしょう。
- Tengo un recuerdo amargo de ese viaje.=私にはその旅行の苦い思い出があります。
- Mi tía es una persona dulce.=私の叔母は温和な人です。
- He recibido una crítica agria. =辛辣な批評を受けました。
味の感想を述べる表現
動詞“estar”+形容詞の文
主語が男性名詞か女性名詞か、あるいは単数か複数かに従って、形容詞も性数変化するので注意しましょう。
- Esta tarta está buena.=このケーキはおいしいです。
- Estos platos chinos están picantes.=これらの中華料理は辛いです。
- Este café está amargo.=このコーヒーは苦いです。
程度を強調したい時は、「とても」を意味する副詞“muy”や「余りにも〜過ぎる」の意味の“demasiado”を付け加えます。
- La paella estaba muy deliciosa.
- Este plato está demasiado picante para los niños.
また、動詞“estar”を過去形にすれば、「おいしかった」と過去の感想を述べる文に変わります。
- Todo estaba muy bueno.=どれもみなおいしかったです。
- La paella de ayer estaba rica.=昨日のパエリアはおいしかったです。
なお、“estar”の代わりに「~な味がする」という意味の“saber”を使ってもほぼ同じ意味となります。
- Este zumo de naranja sabe ácido.=このオレンジジュースは酸っぱいです(酸っぱい味がします)。
- Todos estos platos saben picantes. =これらの料理はどれも辛いです(辛い味がします)。
簡単文¡Qué~!
- ¡Qué bueno/rico!=なんて美味しいんでしょう!
実はこの文は“¡Qué Bueno/rico está 〇〇!”を省略したものです。
ですから、本来は下記の例文のようにこの〇〇の部分に入る単語に応じて形容詞も性数変化しなければならないのですが、省略形で使う場合はあまり気にせず男性単数で使うこともあるようです。
- ¡Qué buena (está la paella)!=(パエリアは)なんておいしいんでしょう!
感嘆文にも“estar”の線過去形“estaba”をつければ過去の感想を述べる文になります。
- ¡Qué sabroso estaba !=ああ、おいしかった!
絶対最上級‟-ísimo / ísima”
スペイン語の絶対最上級とは、形容詞に接尾辞‟-ísimo / ísima”を付けたもので、“muy +形容詞”と同じ意味になります。
「一番~な」(※)という意味ではありません。
※他と比較しての最上級はスペイン語では定冠詞(所有形容詞)+比較級で表します。
- ¡Buenísimo / Buenísima!
- ¡Riquísimo / Riquísima!
どちらも「一番おいしい」ではなく、「とても/素晴らしくおいしい」の意味です。
前者は“Bonísimo / Bonísima”と言うこともあります。
他の形容詞を使って“deliciosísimo”, “sabrosísimo”, “exquisitísimo ”と言えないこともありませんが、発音しにくいこともあって、絶対最上級の場合は上の2つが圧倒的に多く使われています。
その他、料理についての表現
最後に、ここまでにご紹介した3パターンとは異なる方法で「おいしい」を表現する例文をいくつか挙げます。
- Me gusta esta ensalada. =私はこのサラダが好きです。
- Me encantan estos platos vegetarianos.=私はこれらのベジタリアン料理が好きです。
動詞“gustar”(グスタール、「~(人)の気に入る」)も“encantar”(エンカンタール、~(人)を魅了する)も、その後に続く名詞や不定詞が主語となる構文です。
したがって、その名詞が複数の場合は動詞の活用形も複数になります。
- Se ve rico. =おいしそう。
“se ve+〜(形容詞)”=は「〜に見える」という表現なので、例文は「おいしそうに見える」→「おいしそう」の意味です。
特に形容詞“rico”と組み合わせて使われることが多いです。
- Nunca he comido una tarta( tan deliciosa) como ésta.=今までこんなおいしいケーキは食べたことがありません。
括弧内を省略して「こんなケーキは食べたことがありません」としても、大抵は誉め言葉だと解釈できますが、「こんな‟まずい“ケーキ」と訳せなくもありません・・・。
- Este plato está para chuparse los dedos.=この料理はとてもおいしい。
“chuparse los dedos”は直訳すると「(自分の)指を吸う」ですが、「十分満足する」の意味の慣用句との解釈もできます。
そこから“estar para chuparse (comerse ) los dedos”は「とてもおいしい」と訳されるわけです。
まとめ
人と一緒に食事をするときには、食べているものについて何かしらの感想を述べるものですよね。
単に自分が言いたい場合もあれば、コメントせざるを得ない場合もあるでしょう。
特に人にご馳走になった時、しかもそれが手料理だった時は、感想を述べるのが礼儀です。
本当においしいと思っていても、ありきたりのフレーズを繰り返すだけでは、相手に気持ちが伝わりにくいかもしれません。
誰でも自分が提供した料理を褒めてもらえるのは嬉しいものです。
ちょっと大袈裟かと思うようなフレーズでも使ってみてください。
また、おいしくないと感じた時でも正直に言えないことはありますよね。
そういう時にも様々な表現を知っていれば、気まずい雰囲気になるのを避けることができるでしょう。
会話が弾めば、食事もよりおいしく感じられるものです。
食事を楽しむためにも、味に関するボキャブラリーや表現法をたくさん覚えておきましょう!