最近テレビで紹介されることも多くなったスペイン(あるいはスペイン風)レストランやバル(スペイン語ではBar)。
日本での知名度や人気は年々高まっていますよね。
特にバルはお値段的にも気分的にも入りやすいとあって、その数は急激に増えています。
日本でいただくスペイン料理だって本格的なものが多いですし、日本人好みにアレンジされていて、むしろ(日本人にとっては)本場のものより食べやすいということもあるかもしれません。
ただ、飲み物や料理のバリエーション、値段の安さという点ではやはり本場スペインのバルにはかなわないでしょう。
飲み食いするものの質や量だけではなく、スペイン人に混ざって現地の人の会話を聞きながら楽しむお酒やタパスは格別です。
また、スペイン語の学習においてもバルでの経験はとっても役立ちます。
メニューを見て選ぶだけでもボキャブラリーはかなり増えますし、バルの店員や他のお客さんとやり取りをすることで、会話の練習にもなるのです。
ここでは、スペインのバルでよく使われる便利な言葉やフレーズを、スペインバルを楽しむための豆知識とともにご紹介します。
目次
スペイン人にとってのバルとは?
日本でバーというと、夜にお酒を飲みに行くところ、というイメージがありますよね。
スペインではバルは決して大人や酒飲みだけのための場所ではないんです。
子供から老人まで多様な年齢層のお客がいるバルはたくさんあり、中にはベビーカーに乗った赤ちゃんを同伴するお客さんなどもいて驚かされます。
このように、スペイン人の生活にはバルの存在が欠かせません。
一日がバルに始まり、バルに終わる、という人がいると言っても過言ではないでしょう。
朝食をとる人こともできますし、仕事の合間にちょっと小腹が空いた時や帰宅途中に寄ることもできます。
朝早くから夜遅くまで営業し、しかもレストランとは違って休憩時間に閉店したりしないところが多いため、いつでも立ち寄れるというのが大きなメリットでしょう。
お昼ご飯が午後2時・3時、夕飯は9時・10時からスタート、というスペインの独特の食事時間に合わせられない観光客にとっても、バルはありがたい存在です。
バルのメニュー
スペインのレストランやバルでは、観光客の多い場所やチェーン展開している店を除いて、英語や写真付きのメニューを置いていないことが多々あります。
常連客しかこないようなバルだと、メニューすら無いということもあるので驚きですね。
親切に食品サンプルまで用意している日本のレストランに慣れている人は、最初はきっと戸惑うことでしょう。
そこでまずはバルで注文できる飲み物や料理の種類を覚えましょう。
カフェメニュー
朝食やおやつ時、あるいは食後に欠かせないのがカフェ(スペイン語ではcafé)ですね。
カフェといってもコーヒーだけを指すとは限りません。
大抵のバルではお茶やホットチョコレートも注文することができます。
が、やはり一番注文の多いのは下記3タイプのコーヒーでしょう。
- Café solo(カフェ・ソロ):エスプレッソにあたるものです。ごく小さいカップで提供されます。
- Café cortado(カフェ・コルタード):エスプレッソに少しだけミルクを加えたものです。
- Café con leche(カフェ・コン・レチェ):エスプレッソにたっぷりミルクを注いだカフェオレです。
- Té(テ):お茶全般を“té”と言います。どちらかというとコーヒーが主流のスペインですが、最近では好んでお茶を注文する人が増えているため、様々な種類を揃えるお店もあります。ちなみに日本でいう紅茶は“té inglés”(テ・イングレス)あるいは“té negro”(テ・ネグロ)、緑茶は“té verde”(テ・ベルデ)、プーアル茶に似たものは“té rojo”(テ・ロホ)と言います。
- Infusión(インフシオン);上記のお茶以外に、カフェイン(テテイン)の入っていないハーブティーもあり、こちらはTé ではなく“Infusión”と呼ばれます。代表的なものは“Poleo Menta”(ポレオ・メンタ)、Manzanilla(マンサニージャ)、そしてTila(ティラ)で、それぞれアレルギー症状を改善する、消化を助ける、心を落ち着かせるなど、体に働きかける効用が複数あると言われています。
- Chocolate en taza/caliente (チョコラテ・エン・タサ/カリエンテ):ホットチョコレート。“Chocolate”だけでも伝わりますが、「カップに入った」という意味の“en taza”や「熱い」という意味の“caliente”をつければ、チョコレートボンボンやチョコレートケーキではなく飲むチョコレートだということがはっきりするでしょう。
コーヒーは苦手だけれどホットチョコレートは甘すぎるかな、という場合にはColaCaoという粉末状のチョコレートをホットミルクに溶かして飲むものを注文することもできます。
(ColaCaoは商品名です。
日本で知られるミロやネスクイックのようなものと考えてください。
)
朝食時にはcafé con lecheやColaCaoにトーストやクロワッサン、あるいはチュロスを合わせて頼むのが一般的で、大抵のバルでは朝食のセットメニューとして提供しています。
(オプションとしてフレッシュオレンジジュースをつけることもできます。
)
ビール、ワイン、ソフトドリンク、その他
ビール
ビールはスペイン語で“cerveza”(セルベサ)です。
スペインのバルにも缶や瓶のビールはありますが、一番よく飲まれるのはカウンターに設置されている蛇口から注ぐ生ビールでしょう。
生ビールはグラスくらいのサイズのものを“caña”(カーニャ)といい、ジョッキサイズを“jarra”(ハラ)といいます。
※jarraの「ラ」の発音は巻き舌で!
普通のビールの他にもアルコールフリーのビール“cerveza sin alcohol”(セルベサ・シン・アルコール)やビールを甘い炭酸やレモンサイダーで割った飲み物“clara”(クララ)など、様々なバリエーションがあります。
このような飲み物があるから、お酒に強くない人でも一緒にバルを楽しむことができるのでしょうね。
ワイン
ワインには、大きく分けると“vino tinto”(ビノ・ティント、「赤ワイン」)と“vino blanco”(ビノ・ブランコ、「白ワイン」)があります。
“vino rosado”(ビノ、ロサード)と呼ばれるロゼに関しては、スペインでは需要も供給もあまり多くありません。
他に、赤ワインを炭酸で割った“tinto de verano”(ティント・デ・ベラーノ)という飲み物もあります。
「夏」を意味する“verano”が名前に付いているとはいえ、決して夏しか飲めないものではありません。
ワインに比べるとアルコール度が低くなっているので、お酒に弱いでも飲みやすいと言われます。
ただし、その分たくさんの量を飲んでしまいがちなので、注意しましょう。
また、日本でスペインの飲み物としてよく知られる“sangría”(サングリア)ですが、実はスペインでは日常的に飲むものではありません。
赤ワインにフルーツや砂糖を加えたこの飲み物は、観光地や夏のテラスでよく登場するドリンクと考えておいたほうがよいでしょう。
その他ソフトドリンク
コーラやファンタなどの清涼飲料は“refresco”(レフレスコ)と呼ばれます。
フルーツのジュースは“zumo”(スモ)といい、“zumo de naranja”(スモ・デ・ナランハ、「オレンジジュース」)、“zumo de melocotón”(スモ・デ・メロコトン、「桃ジュース」)、“sumo de uva”(スモ・デ・ウバ、「ブドウジュース」)、“sumo de pera”(スモ・デ・ペラ、「洋ナシジュース」)などが一般的です。
ちなみに、オレンジをその場で絞って作られるフレッシュオレンジジュースは“zumo natural”(スモ・ナトゥラル)と呼ばれます。
その他リキュール類
他に主に食前酒として、少し甘めの“vermut”(ベルムー)と呼ばれる飲み物があり、ワインと同じで赤と白があります。
また、主にアンダルシア地方で作られるシェリー酒“Vino de Jerez”(ビノ・デ・へレス)を食前に好んで飲む人もいます。
こちらは白ワインの一種で辛口から甘口まで様々な種類があります。
そしてもちろんどんなバルにも“Whisky/güisqui”(ウィスキあるいはグィスキ、「ウィスキー」)や“ron”(ロン、「ラム」)、“ginebra”(ヒネブラ、「ジン」)などアルコール度の高い蒸留酒が用意されてます。
リキュール類はおちょこサイズのごく小さなグラスで飲まれることが多く、その場合“chupito de ○○”(チュピート・デ・○○)と言って注文します。
料理
一品もの:tapa/tapasとración/raciones
“tapa/tapas”(タパ/タパス)という言葉は日本でもよく知られていますね。
主にバルでドリンクと一緒に楽しむための小皿料理です。
“ración/raciones”(ラシオン/ラシオネス)と言われるものも内容的には同じことがほとんどですが、数人で取り分けるくらいの量が盛られている点が異なります。
また、串(爪楊枝)に刺さって提供されるフィンガーフードを“pincho/pinchos”(ピンチョ/ピンチョス)、一切れのパンの上にちょっとしたものを載せて提供されるものは“montadito/montaditos”(モンタディート/モンタディートス)と呼ぶ場合もあります。
バルによっては一杯ドリンクを頼むとタパスやピンチョスを添えて出してくれるところもたくさんあり、とくにアンダルシア地方のグラナダなどはその量がとても気前のいいことで有名です。
ランチメニュー・定食
スペインの多くのレストランやバルではお昼時になると“menú del día”(メニュー・デル・ディア)と呼ばれる形態の食事を提供します。
大抵は一皿目+二皿目+パン+ドリンク+デザートorコーヒーからなるランチメニューです。
料理やデザートはそれぞれ数種類の中から選ぶことができます。
日本でいう日替わり定食みたいなものでしょうか。
また、“plato combinado”(プラト・コンビナード)といって、大きな一皿に複数の料理を盛りつけたものを選べる店もあります。
メニュー・デル・ディア同様、複数ある料理の選択肢の中から好きに組み合わせて注文できます。
いずれも一人で一品料理を複数頼むよりはお得な価格設定がされています。
バルで使えるフレーズ
次にバルで頻繁に聞かれる(使われる)便利なフレーズを見ていきましょう。
入店時の挨拶
レジや入口付近に店員がいないからと言って、黙ってバルに入るのはあまり良い印象を与えません。
かしこまった挨拶などは必要ありませんが、入店時には店員や先に来ているお客に向かって“Hola.”(オラ、「やあ・こんにちは」)などと声をかけましょう。
レストランと違ってバルではウェイターがテーブルに案内することはあまりありません。
自分で空いているテーブルやカウンター席を見つけて座って大丈夫です。
ただ、混んでいたりすると入口付近で待たされることもあります。
その場合は席を用意してくれるように“Somos tres.”(ソモス・トレス、「私たちは3人連れです」)などと伝えておきましょう。
注文時
日本の居酒屋やバーと同じように、カウンター席に座る(あるいは立ち飲みする)場合は、その都度飲み物やタパスを注文できます。
複雑な文章を考える必要はなく、以下のようなフレーズで問題ありません。
<例>
- Una caña, por favor.(ウナ・カーニャ・ポル・ファボール)
=グラス生ビールを一杯お願いします。
- Una copa de vino tinto, por favor.(ウナ・コパ・デ・ビノ・ティント・ポル・ファボール)
=赤ワインを一杯お願いします。
- Una ración de tortilla, por favor.(ウナ・ラシオン・デ・トルティ―ジャ・ポル・ファボール)
=トルティージャ一切れ(一人前)お願いします。
数量の付け方(単位)が分からなければもっとシンプルに“○○ por favor.”(○○ ポル・ファボール、「○○をください/お願いします」)というだけで十分です。
また、料理の名前が分からない場合でも、カウンターに並んでいる料理を指さしながら、“Esto, por favor.”(エスト・ポル・ファボール)と言えばわかってくれるでしょう。
一方、テーブル席の場合はある程度まとまってから注文するほうがスムーズです。
“Camarero/Camarera”(カマレロ/カマレラ)と呼ばれるウェイター/ウェイトレスに“Oiga”(オイガ、「ちょっと」)、“Perdón”(ペルドン、「すみません」)などと声をかけると注文を取りに来てくれます。
もしメニューを見てもどんな料理かわからない場合は、以下のようなフレーズで聞いてみましょう。
回答はもちろんスペイン語でしょうから、理解できない可能性もありますが・・・・。
とりあえず注文してみて後は料理が来てからのお楽しみ、というのも異国の旅ならではの面白さではないでしょうか。
<例>
- ¿Qué es “ajillo”?(ケ・エス・エル・アヒージョ)=アヒージョとは何ですか?
- ¿Cómo es “calamares a la romana”?(コモ・エス・カラマレス・ア・ラ・ロマーナ)
=ローマ風イカとはどんなものですか?
- ¿Es este plato frío o caliente?(エス・エステ・プラト・フリオ・オ・カリエンテ)
=この料理は冷たいですか、それとも熱いですか?
食後・会計時
食べ終わった頃にウェイターやウェイトレスがやってきて以下のような質問をすることがあります。
- ¿Todo está bien?(トド・エスタ・ビエン)=万事OKですか?
- ¿Le ha gustado?(レ・ア・グスタード)=お気に召しましたか?
その場合は次のように答えましょう。
- Todo está/estaba muy bueno.(トド・エスタ/エスターバ・ムイ・ブエノ)
=すべておいしい/おいしかったです。
- Sí, me ha gustado mucho.(シ・メ・ア・グスタード・ムチョ)
=はい、とても気に入りました/おいしくいただきました。
会計は急いでいなければ座っているその場で行うのが普通です。
カウンターの店員、あるいはフロアにいるウェイター/ウェイトレスに以下のようなフレーズで支払いの準備ができていることを伝えましょう。
- La cuenta, por favor.(ラ・クエンタ・ポル・ファボール)
=お会計お願いします。
- Me cobras/cobra cuando puedas/pueda. (メ・コブラス/コブラ・クアンド・キエラス/キエラ)
=都合のいいときに会計をしてください。
直訳すると「できるときに私から徴収してください。
」という意味です。
- ¿Cuánto es? (クアント・エス)
=いくらですか?
店で買い物をする時には“¿Cuánto cuesta?”(クアント・クエスタ)や “¿Cuánto vale?(クアント・バレ)”を使って値段を聞くのが普通ですが、食事の会計では上記のほうが自然です。
退店時
入る時と同様、無言でバルを出るのはあまりお勧めしません。
“Adiós.”(アディオス、「さようなら」)でも“Hasta luego.”(アスタ・ルエゴ、「またね」)など、何かひと言でも声をかければ店員も客もお互い気分が良いでしょう。
まだ食べ(飲み)続けている他のお客にも“¡Qué aproveche!”(ケ・アプロベチェ、「たっぷり/ゆっくり召し上がれ」)などと声をかけてもいいかもしれません。
きっと“Gracias.”(グラシアス、「ありがとう」)と返してくれますよ。
バルでの注意事項
レストランに比べて、バルは気楽に、カジュアルに飲み食いできる場所です。
そのため、マナーやルールについてそれほど深く考えることはありませんが、最低限のことは気をつけたいですね。
チップの有無
スペイン語でチップは“propina”(プロピナ)と言います。
日本人が海外の国を訪れる際に必ずといっていいほど頭を悩ませるのがチップの問題でしょう。
スペインではチップは必須ではなく、コーヒーやビール一杯のみを頼んだ場合には何も置いていかない人もたくさんいます。
が、テーブル席で給仕を受けたり長居したりした場合には、やはりいくらか渡すのが礼儀でしょう。
おつりで戻ってきた小銭の中からいくらかをトレーに戻すのがスムーズですが、きりのいい数字のためお札しか戻ってこない時やカードで支払いをした時には、別途財布から小銭を出せばよいでしょう。
金額はお店の雰囲気や注文の合計金額によりますが、5~10%置けば十分だと思います。
喫煙・禁煙
スペインでは日本とは違って、屋外の公道ではタバコを吸うことが許されています。
逆に、レストランやバルなどの閉鎖された空間はすべて禁煙です。
唯一吸うことができるのは、屋外にテラス席を設けている場合だけですので、気をつけてください。
料金の違い
バルのカウンターとテーブル席では同じものを注文しても値段が変わることがよくあります。
通常テーブル席の方が少し高めに設定されています。
テラス席の場合はテーブル席よりもさらに高くなるのが普通です。
メニューにきちんと書かれている場合もありますが、そうでなくても多少の上乗せをされることを覚悟してください。
まとめ
スペインの人々の日常生活に溶け込んでいるバル文化。
バルは料理や飲み物だけでなく、家族や友達、同僚、そして全くの他人との会話をも楽しむことのできる社交の場であると言えるでしょう。
お酒を飲む人も飲まない人も、そして小さい子供からお年寄りまでが一緒に過ごせるのもスペインのバルのいいところですね。
そしてバルは楽しみながら語学を身につけるにはもってこいの空間だということもお分かりいただけたと思います。
旅行や出張、あるいは留学でスペインに行く機会があれば、ぜひバル巡りを楽しんでください。
そして教室や独学で覚えたスペイン語を実践してみましょう。