スペイン語は難しい?日本人にとっての難易度を分析。

言語の難易度について、アメリカ合衆国の国務省の機関がまとめた資料があります。

それによると、ラテン語が基本となるロマンス諸語(フランス語・スペイン語・イタリア語)は最も学びやすい言語とされています。

英語と共通のルーツを持つオランダ語やデンマーク語も、比較的容易とされるグループに入っています。

ちなみに日本語や中国語は英語圏の学習者にとって最も難易度の高いとされるグループに分類されています。

ただ、注意しなければならないのは、この資料が英語圏を対象とした調査に基づいているということです。

対象がアジアの言語を母国語とする人たちであった場合には、調査結果は全く違うものになっていたでしょう。

そもそも、外国語(母国語以外)の言語の難易度というのは客観的に測れるものではありませんよね。

母国語との関係によって変わってきますし、第2、第三の言語としてすでに習得済みの言語がればそれも影響します。

では、具体的に日本人(日本語を母国語とする人)にとってスペイン語というのは習得しやすい言語なのでしょうか。

それとも難解な部類に入るのでしょうか。

ここでは、スペイン語の勉強を進める上で、特に日本語を母国語とする学習者が苦労する点や、逆に比較的容易に習得できるという点を分析してみたいと思います。

必修科目の英語とは別に他の外国語も身につけたい、あるいは第2外国語として幾つかの選択肢の中から選ばなければならない、という人の役に立てば幸いです。

文法・語彙

スペイン語の文法や語彙が英語のそれと共通する部分は少なからずあり、英語をある程度習得した人であれば、それほど難しいものではないはずです。

また、語順にある程度の柔軟性があるなど、日本語と似ている部分もあります。

ただ、やはりスペイン語あるいはラテン系の言語ならではの特徴というものもあり、以下の点については難しいと感じる学習者が多いようです。

動詞の活用の多さ

日本人に限らず、スペイン語を外国語として勉強する人の多くが苦労するのが動詞の活用です。

とにかく活用の種類が多いのです。

時制による活用変化以外にも、主語によって変化がありますし、さらには直接法と接続法という2つの言語体系(後述を参照)があるため、一つの動詞につき約50の活用形があることになります。

もちろん大半の動詞は活用に規則性を持ち、グループごとに分けて覚えることもできるのですが、不規則活用の動詞が少なくないのも事実です。

スペイン語の動詞の活用について勉強した後では、日本語や英語のそれがシンプルに見えるようになるかもしれません。

接続法の用法

イタリア語やフランス語と同様、スペイン語の動詞には直接法(el indicative)と接続法(el subjuntivo)という用法があります。

前者が事実や現実、つまり確実なことを伝えるために用いられるのに対し、後者は現実とは反対の状況、不確実な状況の他、意見や感情、否定や非同意、願望や考察など、主観の入る文章で多く使われます。

日本語や英語にも、スペイン語の接続法で表される概念は存在しますが、それ用の動詞の活用はありません。

「もし~だったら」などと過去形などを使って不確かな、あるいは仮定の状況を表します。

最初のうちは直接法と接続法のどちらを使うべきか悩むことが多いと思います。

が、慣れてしまうと不思議と出てくるようになりますし、むしろ接続法がないと微妙なニュアンスが伝わらないと感じることもあるくらいです。

名詞の性、単数・複数

スペイン語の単語は全て男性名詞か女性名詞に分類されます。

そして各語に関わる冠詞や形容詞も性によって変化します(一部変化しない形容詞あり)。

さらに、単数か複数かということも、動詞の活用だけでなく冠詞や形容詞の形に影響しますので注意が必要です。

これらの法則は「性数一致」と呼ばれ、日本語にも英語にも無いものです。

〈例〉

  • el señor trabajador (エル セニョール トラバハドール、「働き者の紳士」)
  • la señora trabajadora(ラ セニョーラ トラバハドーラ、「働き者の婦人」)
  • los señores trabajadores (エル セニョール トラバハドール、「働き者の紳士たち」)
  • las señoras trabajadoras(ラ セニョーラ トラバハドーラ、「働き者の婦人たち」)

“señor/señores”は男性名詞のため、定冠詞は“el/ los”、形容詞は“trabajador/es”となります。

一方、女性名詞“señora/señoras”につく定冠詞は“la/las”、形容詞は“trabajadora/s”です。

この例のように単語の意味から男性なのか女性なのかわかる場合はいいのですが、そうでない単語のほうが圧倒的に多いので、名詞の性を区別するための一連のヒントがあります。

まず大原則として、語末が母音“o” で終われば男性名詞、“a”で終われば女性名詞と判断できます。

が、例外も少なくありません。

つまりaで終わる男性名詞やоで終わる女性名詞も存在するのです。

また、語末がoやa以外の名詞でも、一定の見分け方があります。

例えば“-or”や “-aje”で終わるものは男性名詞が多い、“-dad”や “-ción”、 “-ez”などで終わるものには女性名詞が多くなります。

が、やはり例外はありますので、そこは暗記するしかないのが現実です。

その他:

他にも、日本語とは異なる、あるいは日本には存在しない文法的特徴がいくつかあり、以下がその一例です。

  • エクスクラメーションマーク(感嘆符、“¡!”)やクエスチョンマーク(疑問符、“¿?”):英語では文頭だけですが、スペイン語では文頭と文末の両方に(文頭につけるほうは上下逆さまに)つけます。
  • アクセント記号:全ての単語にアクセントが付くわけではありません。アクセント記号の付け方を覚えるには、まず下記の法則を理解する必要があります。

「母音、または子音の“n”、“s”で終わる語は、最後から二番目の母音(音節)にアクセントが置かれ、それ以外の子音で終わる語は、最後の母音(音節)にアクセントが置かれる」

この法則にあてはまらない場合、つまり強く発音すべきなのが最後から3番目だったりすると、アクセント記号が必要になるわけです。

発音

他の記事でも述べましたが、日本語とスペイン語の発音には大きな共通点があります。

それは“a(あ)・i(い)・u(う)・e(え)・o(お)”の5つの母音を基本とした構造であるということです。

一方、子音には“rr”、“ll”、“j”、“g”、“y”など日本語には無い、あるいは日本人が慣れている英語のアルファベット読みとは発音の仕方が違うものがいくつかあります。

なにはともあれ、大半はスペル通りに読んでも(ローマ字読みをしても)通じるくらいですから、やはりスペイン語の発音に関しては日本人にとっての難易度はそれほど高くないと言えるでしょう。

覚えたての単語や文章でも、試しに使ってみたら予想以上に伝わったという嬉しい経験をした日本人は多いと思います。

会話

最後に、スペイン語会話の難易度について考えみましょう。

発音やイントネーションといった技術的な面ではなく、文化的な違いから生じる問題に着目してみたいと思います。

会話のスピード・タイミング

どんな言語でも、それを母国語としない外国人にとってはネイティブスピーカーの話すスピードは速く聞こえますよね。

日本人の日本語を聞く外国人だって、同じ印象を持つことでしょう。

しかし会話の速度以上に、日本人がスペイン語圏(とくにスペイン)の人と会話するときに戸惑うのが発話のタイミングです。

日本では従来「相手の話をよく聞く」「相手が話している間は発言を控える」などと教育されてきたと思います。

が、スペインではそうではないようです。

相手が終える前に自分の発言をする人、相手に話す余地を与えないほど話し続ける人がたくさんいます。

大勢が集まる食事の場などでは、ひとつのテーブルでいくつもの異なる話題が飛び交っていることも珍しくありません。

こういった状況に慣れていないとスペイン人は行儀が悪い、無礼だ、と考えるかもしれません。

が、必ずしもそうではないことを知っておいたほうがいいと思います。

まず、スペインでは気まずい沈黙を避けようとする傾向が強いように思われます。

多少被ってしまっても、誰も話していない瞬間があるよりはいいと考えるのかもしれません。

また、相手が退屈しないようにという配慮や、相手(との会話)に対し関心を持っていることを示すアピールととることもできます。

いずれにしても、自分の番が来るまで待っていたりすると、いつまでも言いたいことが言えないなんてことになり得ません。

失礼にならない程度に、積極的に発言するタイミング・方法を学ぶことが必要でしょう。

非言語コミュニケーション

会話の際の身振り手振り(ジェスチャー)や、相手との距離の取り方も日本とスペイン語圏の国々とではだいぶ違います。

スペイン語は日本語よりもずっとジェスチャーやボディーランゲージを多用する言語です。

日本人同士で話す時のようにあまり身振り手振りを使わずにいると、反応が薄い=興味が無い、とみなされてしまうかもしれません。

また、ボディータッチが多いのも日本人を戸惑わせる理由のひとつでしょう。

挨拶の際に顔を交差させて口でキスをしているような音を立てる習慣を“dos besos”(ドス ベソス)と言いますが、恥ずかしさやタイミングの難しさにより、なかなか慣れない日本人も多いです。

逆に、日本で日常的にみられる挨拶時の会釈の光景は、スペイン語圏の国ではめったに見かけないでしょう。

特に、言葉を発せず会釈だけで挨拶しようとすると、相手から不思議がられるかもしれません。

まとめ

ここまで見てきたことををまとめてみると、日本人にとってスペイン語の文法は簡単とは言えないかもしれません。

しかし、難しいと言われる側面はどれも反復練習や暗記など、努力次第で上達することができるものです。

発音に関しては、日本語の話者にとって明らかに有利な共通点があり、英語や他のヨーロッパ言語に比べて習得は易しいものと思われます。

文化的違いが影響する会話の態度や、ジェスチャーなど非言語コミュニケーションの側面も、時間と経験さえあれば自然と身についてくるものでしょう。

難しそうだから、あるいは日本語とは全く違う言語だから、と言って躊躇せず、スペイン語学習の一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

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