スペイン語のアルファベットは英語の(ラテン文字の)アルファベット26個にÑ-ñを加えた27個です。
順番的にはÑ-ñはN-nとO-oの間に置かれます。
以前はCh-ch(チェ)、Ll-ll(ジェ)、rr(エレ、大文字は無し)もそれぞれ1つのアルファベットとして扱われており、合計で30ありました。
辞書でもChはCの後、LlはLのあとにそれぞれ置かれていました。
が、現在ではEU加盟国間の共通化を図るなどの理由で、辞書の配列も変更されています。
※Rrで始まる語は存在しないため、もともと辞書の配列にはありませんでした。
目次
アルファベットの読み方
スペイン語のアルファベットの読み方は以下のようになります。
ただ、ここに記すのはあくまでもアルファベット単体としての読み方であって、実際に単語や文章で使われるときの発音とは異なりますので注意してください。
大文字-小文字:発音記号-発音カタカナ表記
A-a:-ア
B-b:bé-イ
C-c:θé-ウ
D-d:dé-デ
E-e:é-エ
F-f:éfe-エフェ
G-g:ħé-ヘ ※日本語の「ヘ」とは異なり、喉の奥を震わせる/こするように発音します。
H-h:átʃe-アチェ
I-i:í―イ
J-j:ħóta-ホタ ※日本語の「ホ」とは異なり、gの「へ」と同様の発音の仕方です。
K-k:ká-カ
L-l:éle-エレ ※R-rのエレとは違う発音です。
後述の説明を参照。
M-m:éme-エメ
N-n:éne-エネ
Ñ-ñ:éñe-エニェ
O-o:ó-オ
P-p:pé-ぺ
Q-q:kú-ク
R-r:ére-エレ
S-s:ése-エセ
T-t:té-テ
U-u:ú-ウ
V-v:úbe-ウベ ※英語のvとは違い、bと全く同じ発音です。
W-w:úbe dóble-ウベドブレ
X-x:ékis-エキス
Y-y:ye-イェ ※「イグリエガ」とも呼ばれることもあります。
Z-z:θéta-セタ ※日本語の「セ」とは異なり、英語のthに近い発音です。
アルファベットの単語中での発音
次に、アルファベットが実際に単語や文章で使われる時の発音の仕方を見ていきましょう。
母音のa、i、u、e、oはそっくりそのまま日本語の「あ、い、う、え、お」の発音なので、ここでは割愛します。
子音の多くはローマ字読みして問題ありませんが、ローマ字読みとも英語のアルファベットの発音の仕方とも異なるものがいくつかあります。
特に注意が必要なものを挙げてみましょう。
bとvの違い
英語とは違ってvはbと全く同じ発音で、使い分ける必要がありません。
その分簡単なように思えますが、単語の綴りを覚える際にはきちんと区別して暗記しなければなりませんね。
どちらも直前の音によって「閉鎖音」か「摩擦音」になります。
lとrとrrの発音
英語でも同じですが、lとrの発音は多くの日本人にとって悩みの種と言えるでしょう。
スペイン語のlは英語のlと似ていて、舌先を上前歯の歯茎に押し付けて発音します。
rも英語のrと近い発音ですが強調の度合いはやや少なく、それ故にlとの判別が難しいと言えます。
rrは巻き舌です。
日本語には無い発音なので、苦手な人も多いでしょう。
マスターするにはとにかく繰り返し練習することです。
なお、rも rrと同様に巻き舌で発音することがあるので要注意です。
単語の頭にある場合と、l、n、sの直後にある場合です。
この三つは聞き取りの際の判別も難しいのですが、下記の例ように一文字違うだけで意味が変わってくる単語もあるので、きちんと聞き分けられるようにしたいものですね。
大抵は文脈から理解できるので問題はありませんが・・・。
<例>pelo=髪の毛、pero=しかし、perro=犬
Jの発音
前述のように、jは日本語のハ行に近い発音ですが、喉(口の奥)を擦りながら息を吐くように発音ところが違います。
スペイン語のJを聞いた後では、日本語の「ハ、ヒ、フ、ヘ、ホ」はだいぶ滑らかな感じがするでしょう。
<例>Japón(ハポン)=日本、jersey(ヘルセイ)=セーター
gの発音
gの発音は、後に続く母音によって大きく変わってきます。
eとiが続くときは上記jと同じで日本語の「へ」と「ヒ」に近い発音ですが、母音のa、o、uが続く時は日本語のガ行(ガ、ゴ、グ)と近い発音になります。
また、2重母音ueやuiが続く時は日本語の(ゲ、ギ)の発音です。
<例>gente(ヘンテ)=人々、 gigante(ヒガンテ)=巨大な
garganta(ガルガンタ)=喉、 goma(ゴマ)=ゴム
guerra(ゲラ)=戦争、 guitarra(ギターラ)=ギター ※rraの「ラ」は巻き舌
まとめると、日本語のガ行に相当する発音はGを使って以下のように表せます。
ga-ガ、gui-ギ、gu-グ、gue-ゲ、go-ゴ
さらに、27のアルファベットには含まれていませんが, uの上に点2つの付いたを文字“ü”使ってgüi-グゥイ、güe-グゥエという発音を含む語もあります。
<例> cigüeña(シグゥエニャ)=こうのとり
llの発音
lが二つ並んでllとなると発音は複雑になります。
もともとは日本語の「リャ」に近い発音だったと言われますが、スペインではほぼ「ジャ」や「ヤ」と聞こえる音で発音されます。
スペイン風オムレツtortillaのことをトリティージャ(あるいはトルティーヤ)と言ったりトルティーリャと言ったりするのはこの理由からです。
一方、南米ペルーやボリビアなどの一部では、現在でも「リャ」と発音する地域があるようです。
yの発音
yaはスペインでは「ヤ」あるいは「ジャ」と発音します。
ただし語末で使われる場合は、英語と同じように「イ」と発音されます。
<例>Yo me voy ya. (ジョ・ボイ・ジャ)=私はもう行きます。
まとめると、後に続く母音によって、ya(ジャ/ヤ)、 ye(ジェ/イェ)、 yi(ジ)、 yo(ジョ/ヨ)、 yu(ジュ/ユ)となります。
が、アルゼンチンでは「シャ」「シェ」「シィ」「ショ」「シュ」と発音される傾向にあります。
また、yとllが同じ発音になることがあるため、vaya(動詞irの接続法現在活用形)とvalla(名詞「垣根」)のような単語は、綴りや文脈で判断するしかありませんね。
cとzの発音
日本語のサ行に相当する音にはsが使われますが、それに近い音がzやcで表されることがあります。
英語のthの発音と同じく、前歯で舌先を軽く挟んで発音記号“θ”のように発音します。
<例>zapato(サパト)=靴、zumo(スモ)=ジュース、zoológico(ソオロヒコ)=動物園
cの後に母音eかiが続く場合は上述のように「セ、シ/スィ」に近い発音ですが、a、o、uが続く時は「カ、コ、ク」のように全く違う発音となります。
<例>cepillo(セピージョ)=ブラシ、cigarrillo(シガリージョ)=タバコ
carta(カルタ)=手紙、color(コロール)=色、 cuchillo(クチージョ)=ナイフ
zは常に英語のthの発音です。
スペイン語にザ行は存在しないのです。
日本にも進出している人気のアパレルブランドZaraは、スペインでは「ザラ」ではなく「サラ」と呼ばれます。
※スペイン南部のアンダルシア地方や中南米の一部の国ではthの音を使わず、すべてsと同じように発音する傾向にあります。
日本語のカ行の音
もともとスペイン語にはkを含む単語はありません。
外来語でkの付く言葉、例えばkechupやkaraoke, karateは使われていますが、それ以外の場合では日本語のカ行に当たる音はcまたはqで表されます。
前述のようにcの後に母音や が続くと英語thの発音になるので、キ・ケはquを使うのです。
すなわち、ca(カ)・qui(キ)・cu(ク)・que(ケ)・co(コ)となります。
hの発音
語の頭に来る場合も語中にある場合もhは基本的に発音しません。
<例>Hola.(オラ)=挨拶の「こんにちは」、alcohol(アルコール)=アルコール・酒類
語末のdの発音
語末にあるdもほとんど、あるいは全く発音されません。
スペインの首都Madridは「マドリ―」あるいは「マドリッ」のように聞こえることが多いです。
地域によっては、英語のthに似た音を発するところもあります。
ñの発音
日本語にも英語にも相当するものがないアルファベットですが、発音はニャ行と同じですので難しくはないでしょう。
スペイン語のキーボードではLの右隣りに位置します。
<例>niño(ニーニョ)=男の子、uña(ウニャ)=爪
綴り(スペル)の説明の仕方
スペイン語の単語の綴りの説明の仕方をご紹介したいと思います。
bとvなど全く同じ音が存在するアルファベットが使われている場合や、似た発音の単語が存在する場合に誤解を避けるための方法です。
スペイン語で“deletrear”(デレトレアール)が「綴る/表記する/書く」という意味の動詞です。
“letra” (レトラ、「文字」)を含むことから関係のある言葉だとわかりますよね。
以下のような文で使われることが多いです。
- ¿Cómo se deletrea su nombre? =あなたの名前はどう綴りますか。
- No sé cómo deletrear esa palabra.=その単語をどう綴るのかわかりません。
一番多いのがよく知られた地名を使う方法です。
例えば、Mariaという名前の綴り(わからない人はあまりいないと思いますが…)を教える場合はこうなります:
“M” de Madrid,“ A” de Argentina, “R” de Rioja, “I ”de Italia, y, otra vez “A”de Argentina.
=マドリードのM、アルゼンチンのA、リオハのR、イタリアのI、そしてもう一度アルゼンチンのA
さらに、「イ」の発音でiとyのどちらを使うかはっきりさせるため、“i latina” (イ・ラティーナ、「ラテン語のイ」)、“y griega”(イ・グリエガ、「ギリシャ語のイ」)と区別する方法もあります。
日本語の場合、平仮名であれば単語の綴りを誤ることは少ないと思います。
が、漢字の表記については迷うことがありますよね。
初対面の人に自己紹介するときや、電話越しに氏名を伝える必要があるときに、どの漢字を使って書くのか説明することがありますが、それと似た感覚だと思ってください。
アルファベットの歌
英語のアルファベットを習う時、「キラキラ星」の歌に合わせて覚えた人も多いのではないでしょうか。
スペインでも子供がアルファベットを覚えるために同じ曲を使うことがあります。
ただ、ñのせいで文字数が1つ多いうえ、w(ウベドブレ)やy(イグリエガ)など呼び方がやや長いものもあるので、どこか字余りでぴったり当てはまらない感じはします。
でもそれもご愛嬌ですよね。
興味のある方は一度聴いてみてください。
まとめ
英語のアルファベットを知っている人には、スペイン語のアルファベットを暗記することは決して難しいことではないでしょう。
ひらがな、カタカナを覚えるのに比べたら、数のうえでも圧倒的に楽ですね。
ただ、英語と同じ文字を使っているからといって発音も同じということではありません。
むしろ英語の知識に惑わされて、誤った発音をしてしまうこともあり得ます。
英語圏の人々は自分の母語とは異なる点、つまり“lla”や“ya”を「ジャ」と発音したり、hを発音しなかったりすることに最初は抵抗があるようです。
アルファベットの習得は、外国語学習における基本中の基本ですね。
簡単ですが、間違えて覚えてしまうと後々の学習にも影響が出ますので、最初から正しいものを身につけるよう心がけましょう。